コミュニケーションの向上とデザイン性を両立して、多種の効果を狙う
エントランス  ガシー・レンカー株式会社は、アメリカをはじめ7ヵ国で、化粧品の通信販売業を営む企業だ。「2001年にガシー・レンカー・ジャパン株式会社(以下GRJ)を設立し日本の市場に参入しました。最初はワンルームマンションを借りて、1人でスタートしたんですよ」(GRJ代表取締役・デスモンド・ブレナン氏、以下同)。以降、順調に業績を伸ばし、それに伴って社員数も増やしていった。現在では53人の従業員が働いている。「同じマンション内の物件を借り増ししてオフィスを拡大しましたが、とにかくコミュニケーションがとりづらい。企業としての体制を整えるためにも、移転が急務になったのです」。そこで選んだのが今のオフィスだ。設計は、数社に依頼してコンペを実施。「女性スタッフが多いので、曲線をうまく使ったフェミニンなデザインを提案してくれた会社を選びました。エントランスにはショールーム機能を持たせたいというオーダーにも答えてくれましたよ」。こうして、かねてからの念願であった企業の「顔」も整え(写真)、新生GRJがスタートしたのだ。
●タスクマップを作成して、部署の配置を検討
オープンコミュニケーション  以前は、各部署を同一マンション内の4室に散在させていたGRJ。移転ですべてを集約するにあたっては、ワークフローを見直したという。「業務の流れの中で、どの部署がどういうタイミングで関わるのかをマップにしたんです。部署間の相関図のようなものをつくって、オープンコミュニケーションが必要な部署同士を近くに配置しようと」。その結果、テレマーケティング担当やインターネット担当、ブランドマネージメント担当などの部署は、仕切りを設けずに隣接させた。逆に、経理や物流担当といった独立した部署は、明確に仕切って配置。「これで、全体の業務効率も大幅に改善されたと思います」。
●経営者と従業員の距離を縮める工夫も
社長室  一方で、社長室は各部署を見渡せる位置に設置。壁には透明アクリルを採用して、お互いの存在や仕事ぶりが確認できるようにした。透明の仕切りを採用する企業は多いが、それは明るく開放的なオフィスにしようという狙いによる場合が多い。GRJでは、それ以外に社員が気軽に社長と対話できる雰囲気を重視したという。「移転前は不便な点が多かった半面、狭い空間を共有することでファミリー企業のような連帯感があったんですね。スペースが広くなっても、そういったいい点は維持させたかったのです」。
●打ち合わせスペースを拡充させて交流を活性化
ミーティングルーム  ワンルームの寄せ集めだった以前は、打ち合わせ専用のスペースがなかった。「ミーティングは、関係者がひと部屋に集まって実施していました。イスを収めきれずに、立ったまま参加する者が出ることもあった(笑)」。もちろん新オフィスでは、そんな不便さも解消。写真のように、壁面に水槽を埋め込んだ凝ったつくりのスペースを含めて、計3ヵ所にミーティングルームを設置。このほか、執務スペース内に小テーブルを置いて、社員同士のちょっとした打ち合わせにも対応できるようにしてある。
●オン・オフの切り替えはリフレッシュルームで
リフレッシュルーム  スペースに余裕ができたことを利用して、リフレッシュルームも設けている。こちらは、グッと明るさを落として、バーのような雰囲気にしている。「ここで昼にお弁当を食べたり、小休止をとったりします。業務を活性化するには、息抜きの場を提供することも、大切だと考えました」。ちなみに夕方以降は、まさにバーラウンジになるという。「別室にある冷蔵庫に自分の飲み物を保管しておいて、夜にここでアルコールを飲む社員もいるんですよ(笑)」。
●柱の多いオフィス空間を、デザインでカバー
倉庫デザイナーの机  商品である化粧品の発表の場を主にテレビショッピングにおいているGRJ。テレビ局との打合せに都合の良い中目黒でオフィスを探したところ、広さの丁度良い今のオフィスを見つけた。元は住居用のマンションだったため、柱やハリが多く、設計者泣かせだったのだそう。 「この問題は、デザインで解決してもらいました。例えば、カーブしているエントランスの壁と柱の間にできた空間は、倉庫として使っています(写真左)」。また、デザイナーの机は、あえて柱のわきに作り付け、他の社員より広く確保(写真右)。これで机に奥行きが出て、専用のプリンターを置けるようになっている。通常は室内をせまく見せる要因になる柱やハリが、同社ではあまり目立たない仕上がりになっているのも優れたポイントだ。 「会社は生きもののように、その時の状況により形を変えるもの。スペースの有効利用は事業展開の変化に即座に対応できる力でもあるのです」。
 デザイン・施工:翔栄クリエイト