オフィスよろず話 移転企業とパートナーシップ
自分たちの手で、自分たちが働きやすいオフィスを創る vol.1
快適かつ機能的なオフィスとは、どのようなものだろう。今回は、2004年「日経ニューオフィス賞」を獲得したサイボウズ株式会社(以下サイボウズ社)のオフィス設計にプロジェクトマネージャーとして関わった株式会社リンクプレイス(以下リンクプレイス社)の長尾成浩氏に、移転コンサルタントの視点から理想的なオフィスと、その構築に際してのパートナーシップについてお話をうかがった。

  「私たちリンクプレイス社は、オフィスはひとつのツールと考えています。コミュニケーションをよくするためのツールかもしれませんし、ブランディングのためのツールかもしれませんが、ツールとして100%使いこなせることが、いいオフィスの条件だと考えています」と長尾氏は語る。いくら立派な施設やシステムを導入しても、社員が効率的に活用できなければ、何の意味もないためだ。そのため、リンクプレイス社のオフィスプロジェクトは「オフィス内のスペースが実際にどう使われる」のかを最も重視して進行している。
  今回のサイボウズ社の移転の場合も同様だ。社員の中から移転に関わるプロジェクトチームを選抜。パートナーとしてプロジェクトに参加した長尾氏のリードのもと、このプロジェクトチームを中心に、オフィス移転プロジェクトを進めた。
  オフィスプランを考える際、「社員が『どう使うのか』、訪問者(お客様)に『どう感じてほしいのか』を明確にすることが幹となります。そのため、設計に入る前に企業が持つワークスタイルを明確化していく必要が生じます」。サイボウズ社の移転の際もプロジェクトチームでディスカッションを繰り返した。
  「部屋はいくつ必要なのか」「何に使う部屋なのか」そして「何人で使う部屋なのか」など、組織や業務の流れを想定して、ひとつずつ具体的に話し合っていく。「たとえばサイボウズ社のようなIT企業の場合、サーバールームなどOA機器が一般の会社より多く、そういった配慮も実際の業務をする人の視点で考える必要があります。日の光を嫌うOA機器を設置するPCルームには窓がなくてもかまいませんが、ある程度の広さを確保しなければならないとか。逆にお客様をお通しする応接室は、広さよりも明るさが優先されますし、窓からの眺めも重要になります。こうして、それぞれの部屋にテーマ性を与えることで、効率的な配置が自然と完成していくのです」
  その中で長尾さんらパートナーの仕事は、ディスカッションにテーマを与えるなど、あくまでもプロジェクト進行をリードすることだという。「オフィス移転プロジェクトの中核をなすのは、結局は実際に働いている社員の方々の『自分たちの手で、自分たちが働きやすいオフィスを創る』という熱意によるところが大きい。私たちコンサルタントの仕事はその手助けをしているにすぎない。組織のモチベーションを高めるオフィスの構築は、社員のみなさんの理解と熱意なくしてはありえないのです」

日経ニューオフィス賞
昭和63年から毎年実施されている。同賞では、企業理念に基づいたオフィスのコンセプトがどう表現されているか、「効率的な情報化システムの構築」「地球環境への配慮」などが実現されているか、といった観点から、生産性の高い魅力的なオフィスを選定している。


エレベーターホールからすぐにはレセプションエリアは見せず、あえてトンネル状のアプローチにし、プロジェクトのコンセプトでもある「わくわく」感を演出


寒色系と暖色系でエリアを分ける。可動式のオプションが豊富な什器のため席替えの際も基本のワークステーションは動かさずワゴン、荷物、オプションのみの移動が可能



部屋ごとにテーマ性を持たせて、ひとつの世界観を作っていった、部屋はすべて日本の地名からとっている。写真上社長の出身地でもある「松山」と命名。ミカンの産地で有名なので、それをテーマに、リビング風のソファ、電球色の照明、若草色の壁、暖色系のカーペットなどを決めていった。写真下は「軽井沢」
▲写真提供 / サイボウズ株式会社