オフィスよろず話 オフィス環境でのユニバーサルデザイン

vol.4 オフィス環境でのユニバーサルデザイン
日本ではまだあまりなじみのない「ユニバーサルデザイン」という言葉。障害者や高齢者の不便をなくすバリアフリーの考え方と混同されやすいが、じつは一般のオフィス環境を改善する上でも大いに役立つ要素を含んでいる。オフィスにユニバーサルデザインを導入することで何がどう変わるのか? またどのように導入していけばよいのか? NPO法人・日本ユニバーサルデザイン研究機構の横尾良笑理事長にお話を聞いた。
横尾さん 日本ユニバーサルデザイン研究機構
理事長・横尾良笑さん
ユニバーサルデザインに関する教育・コンサルティングを中心に活動。
世界各国からのUD情報を集めるなど、調査、研究も行う。
ユニバーサルデザインに関するTV番組「よみがえれニッポン」にレギュ
ラーコメンテーターとして出演中。
オフィスのユニバーサルデザイン化で
ミスやストレスを軽減する
  日本でのユニバーサルデザイン(以下UD)普及活動のトップランナーである横尾さんは、「より多くの人にとって使いやすく、ヒューマンエラーを減らしていくもUDの要素の一つ。大げさに考える必要はありません。ちょっとした工夫で使いやすくなったり、ミスが減ったり、仕事が楽しくなったりします」と言う。
  「書類がなくなるとか、収納が乱雑になる、情報が共有できないなど、オフィスにもミスしやすい環境というのがあります。同じ間違いを繰り返しやすい場合は人が問題なのではなく道具や環境が問題であると考えたほうがいい。それを自分が悪いのだとか、苦手なのだと思ってしまっている人が多いんですね。たとえば、左利きの人はハサミをなんとなく苦手と感じていたりする。これはハサミが左利き用に作られていないということですから、本来苦手意識を感じないで済むように、道具や環境を変えればいいんです」。
  一見快適で働きやすく見えるオフィスにも、「使いづらい」「間違いやすい」などのマイナス要素が必ずいくつかあるもの。それらを個人の問題と決めつけてしまっては、いつまでたっても改善しない。「人ではなく、道具や表示のデザイン、ワーキングスペースのレイアウトなどにも目を向けてマイナス要素を洗い出し、これを改善していくことでミスやストレスの原因となるものを減らせる」と横尾さんは言う。
  「UDは美人コンテストではない、その逆です。いいものを選んでいくとか、いい機能を付加していくのではなく、ダメなところを見つけて取り除いていくわけです。だから、まっさらな状態からオフィスを創ってくれと言われても、『これが理想のユニバーサルデザインのオフィスです』というものはないんですね。まずその会社や利用者の特性に合わせて、想定されるエラーをなくしたオフィスのレイアウトを試作してみます。そこで実際に働いてみて、使い勝手が悪いところ、エラーしやすいところ、ムダなところを検証して改善していくのです。あくまでも『こちらのほうがもっとわかりやすいね、使いやすいね』という“比較級”の形で改善していくのがUDです」。
  では、みんなが使いやすく働きやすいオフィスにしたいという場合、UD化をどんな手順で進めたらよいのだろうか。
  「UDのよさは人の特性に合わせるということですから、まず大事なのはそこで働くのはどういう人たちなのかを知ること。あらためてどんな人たちがいるのか具体的に書き出してみましょう(例/若い女性社員で力の弱い人が何名、若い女性社員で力の強い人が何名、老眼の始まった男性で色弱の人が何名etc.)。次は職種や会社の特性と、かける予算や時間などの制約条件を書き出します。それをふまえた上で、「このオフィスをどうしたいのか」というコンセプトを明確にして『何をもってオフィスレイアウトを成功とするのか』を明文化します(例/ミスを減らす、情報共有化の徹底、時間のムダをなくすetc.)。職場のみんなの使いやすさに配慮するために、全員がプロジェクトに参加することが大事で、トップダウンではダメ。いろいろな条件と目標設定を明文化して、共通理解のもとで進めれば意見ズレはある程度予防できます。ミスの原因を自分が苦手だからだと思い込んでいる人が多いので、働く人自身、不便に気づいていないことがほとんど。まずは、社員の日々の作業をじっと1時間、観察してみてください。初めてでも使いにくさの原因にある程度気づくことができます。もちろん使いにくさの原因を取り除くにはやり方があります。そういった意味で各会社にUDの知識を持った人がいればなおいいわけですから、現在コーディネーターの養成と資格認定に取り組んでいるところです」。
  仕事がしやすいオフィス環境ではミスも減り、よけいな労力を使わず、ストレスや疲労も軽減される。今後、オフィスづくりにUDの考え方を上手に取り入れていく企業が増えていくだろう。
取材協力:
内閣府認証 特定非営利活動法人
日本ユニバーサルデザイン研究機構
ユニバーサルデザイン(UD)を通して、誰もが「個性ある個」として尊重され、暮らしやすい世の中を目指す。UDコーディネーター2級資格取得講座の主催、メーカー、サービス業など企業のUD導入に対するコンサルティングや研修、ユーザビリティ調査を行うほか、2005年から「使いやすさ検証済 認証制度」を実施運営している。
(住所/東京・千代田区)
タイムレコーダ

2005年に「使いやすさ検証済 認証制度」の第一号となったタイムレコーダ(発売元マックス)。設定が簡単・確実にできるようにし、画面もエラー表示も日本語表示にして解りやすくすることで、ミスがなくなるようUD化した。
ちよだプラットフォームフクエア

横尾さんのオフィスがある「ちよだプラットフォームスクエア」は、まさにUDオフィスの好事例。様々な利用状況を考え、自由度が高い設計がされている。
パブリックスペース

打合せルームを初めとしたパブリックスペースは、契約者なら誰でも自由に使うことができる。
喫煙ルーム

ホワイトボードなどを完備した喫煙ルームは、ただタバコを吸うだけのスペースではなく、打ち合わせやプレゼンにも活用できる。